2019年マイクロマウスクラシック機体紹介
この記事はMicro Mouse Advent Calendar 2019の15日目の記事です。
昨日の記事はそらさんの「2019年の振り返り」でした。
そらさんは全日本で車検終了直前にマシンを置きに行くというやらかしがあったようですが、マシンを置き忘れて車検終了後にアナウンスで呼び出されて慌てて置きに行った人がいたらしいですよ!
一体誰なんだ...
以下、本題。
今年製作した機体について紹介します。
MAXパラメータは公開しま......せん!
今年度機体の「Tyrant」です。
<第一形態>
<第二形態>
<最終形態>
機体名 | Tyrant |
全長 | 100mm |
幅 | 67mm |
重量 | 107g |
マイコン | RX631 100pin |
モータ |
Faulhaber 1717T003SR HK-AP03 4000KV(吸引) |
エンコーダ | IEH2-512 |
モータドライバ |
TB6614FNG CT-7A(吸引) |
IMU | MPU-6500 |
センサ | ST-1KL3A+SFH4550 |
バッテリー | Turnigy nano-tech 200mAh 2Cell |
ギア |
kkpmo M0.3 20T ミスミ M0.3 69T |
<回路図>
<AW>
今年の2月に完成した、3作目のクラシックマウス。
前作は吸引力が足りておらずターン速度に限界が見られたので、今作では吸引モータにブラシレスモータを採用し、吸引力とターン速度の向上を図った。
その結果、安定性はイマイチながら、最短走行時の全てのターン速度を大幅に上げることに成功。
セーフティをリリースすることで全ターン2.0m/s以上での走行が可能となり、部室迷路ではそれなりに走っていたが、全日本では機体が応えてくれず、幻の機能となった。
形態の違い
○第一形態(~3月中旬)
・ギアのバックラッシュを大きくしすぎて足回りがガタガタ
・吸引ファンの設計が悪く、吸引時の振動が酷い
・ホイール塗装(黒)
○第二形態(~9月)
・ギアのバックラッシュ調整(0.2→0.05)
・吸引ファンの厚さを減らす、羽数を減らす、羽の捻りをなくす
・吸引スカートの素材を少し固めのものに変更
・ホイール無塗装(白)
○最終形態
・足回りのネジを皿ネジからナベねじに変更、ベアリング間にスペーサ追加
・吸引ファンの基板面に円形のガードを付ける
・ホイール塗装(金)
工夫点
・吸引機構
吸引機構を搭載したマウスでは吸引モータにコアレスモータを使う人が多いかと思います。
しかし、コアレスモータでは固定の関係上、吸引ファンを上から保持する形となり、固定を十分に行わないと吸引ファンが基板に接触して割れてしまうことがあります。
また、吸引モータを上に生やすことで重心も高くなり、固定するためのパーツも増えます。
そこで、それらの欠点を無くすため、ブラシレスモータを使いました。
ブラシレスモータは基板にネジとナットで固定し、吸引ファンに埋め込み下から保持する形で搭載することで、固定するパーツを減らすことと、吸引ファンの基板への接触を避けることと、低重心化を実現しました。
最終形態のファン形状であればファンが割れたことはありません。
ちなみに、吸引スカートはメンディングテープ(スコッチ)とミスミの部品袋を組み合わせています。
テープの粘着面を必要な長さだけ残してカットした部品袋を貼り付けるというものです。
硬すぎず、柔らかすぎず、ボロボロになることはないです。
・モータマウント
1717モータに関しては、背を合わせて配置をすることが可能で、そうすることで梁のようになり、剛性を確保することができます。
新たにパーツを増やすことがなく、板金のように重課金をすることもなく簡単にそれなりに剛性を確保できるのでおすすめです。
・基板外形
基板の前輪の外側がツメのようになっていると思います。
こうすることで、ターン中に内側に接触してもタイヤがロックされず、気合で走り抜けることが可能です。
基板厚は1mmでしたが、ツメが割れることはありませんでした。
・マイコン
前作ではRAMの容量不足を感じたので、今作では100ピンのRX631を使いました。
64ピンだとROM:512kB,RAM:64kBが最大ですが、100ピンだとROM:2MB,RAM:256kBが最大で、ROM,RAMともに容量が4倍になります。
走行ログを一度に多く記録することや、複雑な最短経路導出が可能になります。
秋月でも売っているので入手性も良いです。
RX71MやSTM32系も検討していましたが、RX631の100ピンで事足りるだろうと思ったのと、開発環境の移行に踏ん切りがつかなかったのでやめました。
失敗点
・トルクが足りない
吸引モータのブラシレスモータが電流を結構食っているようで、駆動モータに電流が足りなくなりました。
トレッド幅を狭くしすぎたことも相まって、ターンなど最短走行時にDuty比が100%になることが頻繁に発生し、不安定な走行を常にします。(それだけが原因とは言っていない)
もっとPOWERなバッテリーを載せようにもPOWERになるにつれてデカく、重くなるため、載せれないのが現状です。
マウスの吸引用途では、ブラシレスモータは固定が楽だということ以外、性能面ではコアレスモータのほうが適していると思います。
・45度センサ
壁切れを早く読む目的で付けましたが、クラッシュ時になぜか頻繁に45度センサだけが曲がり、信頼性が他のセンサより低かったので最後まで使うことはありませんでした。
ただの装飾となり、そのぶん慣性モーメントが微小ながら大きくなったので次回作はなくそうと思います。
・バッテリーの固定
固定をよく考えずに製作した結果、バッテリーを交換・付け直すごとに養生テープで留めることになりました。
養生テープの消費は増え、剥がしたテープをコロコロのケースやマウスのケースに付ける癖がつきました。(乱雑にテープが貼ってるあるのはそのせいです)
・センサ値のブレ
電源の回路設計が良くないのか、全てのセンサの値がブレます。
それなりには走っていますが、調整していくにしたがって、そのブレがかなり気になったので、次回作ではどうにかしたいと思います。
小ネタ
・吸引ファンを下から保持しているから吸引ファンが割れることはない(大嘘)
クラッシュ時に機体の先端の横センサが曲がって吸引ファンと接触したり、基板に羽が接触して割れました。(と言っても、上から保持するよりは割れにくいと思います)
吸引ファン自体はDMM.makeのアクリルで造形したもので、精度はいいものの、割れると粉々になります。
関西地区大会1週間前に割って、予備がなかったときは流石に焦りましたが、DMM.makeのエクスプレスサービスなら、月曜日(祝日)に発注をかけて金曜日には届いたので、割ったとしても冷静になりましょう。
エクスプレスサービスで発注するとたまに塗装が乾ききっていなかったり、塗装ムラがある状態で送られてくることがあるので、時間があって見た目を気にするなら通常の発注がおすすめです。(最終形態の吸引ファンの色が所々白くなっているのはそのせい)
次回作の予告
ターン速度にハード的な限界が見えたので、↑のようなクラシックとハーフの中間を狙った小型軽量な機体を開発したいと思います。
機械や回路などハードがそれなりに納得がいく機体を目指すため、ロールアウトはかなり先になりそうです。
場合によってはDCX10Lを使った機体も製作するかもしれないです。
機体のカラーはExiaではなく、イチイバルを意識しています。(Tyrantは天羽々斬で、最終形態はアマルガムを意識しています。分かる人だけ分かってくれればいいな...)
来年度の活動
とりあえず新作を...と言いたいところですが、マウスは諸事情につきしばらくお休みにしたいと思います。
来年再開できるかは分かりませんが、大会に出てたら優しい目で見守ってください。
出てなかったら何らかの闇に飲まれたと思ってお察しください。
明日の記事はY.I.さんで「null」です。